2019年4月16日、株式会社USEN Mediaさんと、株式会社アジケさんが共催する「いまこそデザインに知財戦略が必要な理由 UX dub vol.4」に参加してきました。 デザインにおいては、事業戦略やプロダクトからデザインするという考え方が重要視されつつありますが、デザインに対して「知的財産」に対する視点を持つ企業はまだまだ多くありません。せっかく良いUIができたとしても、知財で保護をしていなければ他社に真似されてしまう可能性があります。 今回のイベントでは「デザインと知財」について、数々のIT企業やスタートアップ企業の知財戦略に従事するIPTech特許業務法人 代表弁理 ・公認会計士の安高史朗氏のお話を聞いてきましたので、さくっとまとめてみました。

経済産業省・特許庁によるデザイン経営宣⾔のとりまとめ

2018年5月に経済産業省・特許庁が「デザイン経営宣⾔」を取りまとめました。 デザイン経営の定義は下記の通りとなっています。

「デザイン経営」とは、デザインを企業価値向上のための重要な経営資源として活⽤する経営である。

デザイン経営を取り入れることで日本企業のブランド力向上+イノベーション力向上を促して、日本企業の競争力を向上を図るものです。特許庁が参画しているのはデザインにおける意匠を中心とした知財戦略も経営に取り込むことも狙いとしてあります。

デザイン経営を取り入れている企業ではCXOを設置

デザイン経営を取り入れている企業では、役員にデザインに関する責任者メンバーCXO(Chief Experience Officer:体験の最高責任者)を設置しているところもあり、USEN Mediaさんはアジケさんの代表である梅本氏を起用しています。 Web界隈でCXOで有名な人と言えば、深津 貴之氏ですね。ピースオブケイクさんのnoteのサービスの勢いは氏が参画したことによることは間違いないと思いますが、ピースオブケイクさんやUSEN MediaさんのようにCXOを取り入れている企業は、まだまだ少ないということです。

デザインにおける知財

デザインはブランドにおける競争力を優位に保てるものの一つですが、Webやアプリなどにおけるデザインは比較的容易に模倣、いわゆる「パクリ」されてしまいがちです。それらを守るという意味では下記のように知財に関する権利を活用した方が良いということになります。

  1. 著作権(デザイン)
  2. 不正表示防止法(商品表示など)
  3. 意匠権(画面デザイン意匠)
  4. 商標権(図形商標・ロゴ商標)
  5. 特許権(UI特許)

この中で、1と2の著作権、不正表示防止法は手続きを必要とせず自然発生し、3、4、5の意匠権、商標権、特許権は、特許庁に出願して手続きをする必要があります。 その後、話は著作権侵害や意匠権侵害、商標権侵害、特許侵害における様々な事例が紹介され、特にAppleのような企業は多数の特許を持っていて、それは訴訟対策にもなり、企業のブランドを保護することができるので、うまく活用することが良いと述べていました。 当日の安高氏の資料がありますので、興味のある方はチェックしてみてください。

パネルディスカッション&Q&Aコーナー

続いては、梅本氏が安高氏に質問をするという形でのパネルディスカッションと、参加者からの質問をsli.doを使って受け付けて答えるというQ&Aコーナーです。 冒頭では、sli.doを使って会場の職種と社内でデザインの知財保護を進めているかという質問が行われ、デザイナー・知財担当者が多く、知財保護を進めているかの質問に対しては、「いいえ」が61%、「はい」が39%となりました。知財担当者の方もそれなりにいたので、この割合になったのではないかと思います。 それでは、Q&Aについてをさくっと紹介します。

Q. なぜデザインにおける知財戦略が必要なのか

  • デザインにおける価値が高まっており、模倣されやすいのでそれをいかにして守るか
  • 問題が起こる前の対処、防御
  • これまではエンジニアの開発、発明が知財として扱われていたが、これからはデザインにも広げる

Q. 社内で知財保護のカルチャーを作るための必要なことは

  • 知財担当者をまず置き、実績を作る
  • 実際に出願、あるいは相談をして事例を作る

Q. 知財を保護するために専門家にはどのタイミングで相談したらいい?

  • 可能なら事業の骨子ができあがった早い段階で安高氏のような弁理士などに相談をするのが好ましい
  • 特に商標においては問題が発生することがあるので、やはり早い段階が好ましい

Q. 社内で知財保護を反対された場合、どう乗りこえたらいいか?

  • 知財は効果が顕在化しないことが多いが、取らないことによるリスクを根気よく経営層に説得する必要がある

以後は、参加者からの質問です。

Q. 新しいSNS企画中です。 保護されている他社のデザインを確認するのに適した資料、サイトが知りたいです。

Q. 協力会社が集まっておこなったブレストや打ち合わせで出たアイデアは誰のものと考えるのがいいでしょうか。皆が納得するスムースなやり方はあるでしょうか

  • 会社内であれば、会社が権利を持つ、従業員に対して報奨
  • 協力会社がいる場合、共同出願などの提案(力関係にもよる)
  • 業務委託契約の中で契約をしておくこともあり
  • 事前に契約書を交わすのがよいが、難しい

Q. 何が知財に引っかかっているなど確かめるすべは、専門家でなければ難しいのでしょうか?

  • 自分で判断するだけではなく、専門家を交えて判断したほうがベスト

Q. 自分の作っているものが、他のものに似ていて、あぶないかも、と思ったら、どのように対応するべきですか?

  • 社内の知財部か、外部に調査してもらうのがいい

Q. ソースコードに対しても知財適用可能なのか

  • 保護対象

Q. CSSのカラーコードはどうなのか?

  • 難しい、まるっとコピーしている場合はアウト

さくっとまとめてみましたが、日本国内において大手企業以外の企業でデザインと知財に対しての戦略を取り入れている企業はまだまだ少ないのではないでしょうか。競合優位性という観点、また、侵害をしないという観点からもぜひとも経営戦略の一つに組み込むことの検討をおすすめします。

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