「どのようなシステムを開発すればユーザーに使ってもらえるのか」「開発の手戻りを減らして効率よくプロジェクトを進めたい」このような課題を抱えている開発担当者の方は多いのではないでしょうか。アプリやWebシステム開発において、ユーザーの真の課題を見つけ出し、最適な解決策へ導く手法として「ダブルダイヤモンド」が注目されています。本記事では、この手法の基礎知識から具体的なフェーズ、実践のコツまで詳しく解説します。自社の課題解決にぜひお役立てください。ダブルダイヤモンドとは?ダブルダイヤモンドは、英国デザイン協議会が提唱したフレームワークです。その基本的な定義と、4つのフェーズについて解説します。4つのフェーズからなるデザイン思考の型ダブルダイヤモンドとは、「発見」「定義」「展開」「提供」という4つの段階を経て思考を発散と収束させるフレームワークです。複雑な課題に対して、広い視野で情報を集め、最終的にひとつの解決策へと絞り込む構造を持っています。具体的には、以下の4つのフェーズで構成されています。発見(Discover):情報を集めて思考を発散させる定義(Define):解決すべき課題を一つに収束させる展開(Develop):解決策のアイデアを発散させる提供(Deliver):最適な解決策に収束させるこのように、2つのひし形(ダイヤモンド)を描くように進めるのが特徴です。システム開発プロジェクトでは、この型に沿って以下の4つのアクションを順に進めます。各フェーズの役割を理解し、プロジェクトに適用することが成功の鍵となります。1.発見(Discover):潜在ニーズの探索最初のフェーズの目的は、ユーザーインタビューや市場調査を通じて広く情報を集めることです。最初から解決策を考えるのではなく、まずは思考を発散させてユーザーの潜在的なニーズを探ります。具体的なリサーチ手法には以下のようなものがあります。ユーザーへの直接ヒアリング競合サービスの市場調査既存データの分析2.定義(Define):解決すべき問題の決定第2フェーズでは、集めた情報をもとに、取り組むべき核心的な課題をひとつに絞り込みます。発見フェーズで得た膨大なデータから、本当に解決すべき問題は何かを定義し、思考を収束させます。この段階では、以下の手法がよく用いられます。ペルソナの作成カスタマージャーニーマップの策定問題定義書の作成3.展開(Develop):解決策のアイデア創出第3フェーズでは、定義した課題に対して、ブレインストーミングなどを用いて可能な限りの解決策を発散させます。ここでは実現可能性を一旦横に置き、自由な発想で多様な機能やUIのアイデアを出します。具体的な進め方は以下の通りです。チーム全体でアイデアを出し合う他社の優れたUIや機能を参考にする出たアイデアを分類し整理する4.提供(Deliver):検証とプロトタイプ作成最終フェーズはアイデアをプロトタイプとして形にし、ユーザーテストを通じて最も効果的な解決策に収束させるプロセスです。展開フェーズで出たアイデアを実際に触れる形にし、有効性を検証します。主な作業手順は以下のようになります。プロトタイプ(試作品)を作成するターゲットユーザーにテストを実施するフィードバックをもとに改善を繰り返すアジャイル開発やデザイン思考との違いダブルダイヤモンドは、抽象的なデザイン思考のプロセスを、より実践的で具体的な手順に落とし込んだ手法です。デザイン思考が課題解決の考え方そのものを指すのに対し、本手法はそれを実行するための型として機能します。また、アジャイル開発との主な違いは以下の表の通りです。項目ダブルダイヤモンドアジャイル開発主な目的正しい課題を見つけ、最適な解決策を導き出す要件を素早く実装し、柔軟に改善を繰り返す注力フェーズ上流工程(企画・要件定義・UI/UX設計)下流工程(開発・実装・テスト)これらは対立するものではなく、上流工程でダブルダイヤモンドを活用し、実装段階でアジャイル開発を用いることで、より質の高いシステム構築が可能になります。Webシステム・アプリ開発にダブルダイヤモンドが必要な理由Webアプリやシステム開発において、ダブルダイヤモンドのプロセスが重要視されている理由は2つです。ユーザーの真の課題を正確に特定するため開発の手戻りを防ぎコストを最適化できるユーザーの真の課題を正確に特定するため最大の理由は、表面的な要望にとらわれず、ユーザーのインサイトを深く掘り下げることでズレのない要件定義が可能になるためです。ユーザー自身も、自分が本当に求めている解決策を言語化できていないことが少なくありません。例えば、「新しい機能が欲しい」という要望の裏には、「既存の操作がわかりにくい」という根本的な不満が隠れている場合があります。思考の発散と収束を繰り返すことで、思い込みを排除し、本当に解決すべき本質的な課題を見つけ出すことができます。開発の手戻りを防ぎコストを最適化できる上流工程で仮説検証をしっかりと行うことで、実装後の大幅な修正を防ぎ、結果的に予算と時間を節約できます。システムの開発が進んだ後から要件を変更すると、修正に膨大なコストと工数がかかってしまいます。以下のステップを踏むことで、リスクを最小限に抑えられます。プロトタイプを作成してユーザーテストを実施する不要な機能や使いにくいUIを事前に洗い出す要件が固まってから本格的な開発(コーディング)に移行するこのように、早い段階で軌道修正を行うことが、プロジェクト全体の成功に直結します。ダブルダイヤモンドの活用による課題解決事例ここではBtoB向けSaaSアプリを想定し、4つのフェーズに沿って課題解決に至る具体的なプロセスを解説します。発見:ユーザーの本音を徹底調査定義:ボトルネックとなる課題の特定展開:オンボーディング改善案の創出提供:プロトタイプ検証と実装1.発見:ユーザーの本音を徹底調査最初のフェーズでは、既存SaaSの解約率が高い原因を探るため、ユーザーへのヒアリングを実施します。表面的な意見だけでなく、潜在的な不満を洗い出すことが目的です。ユーザーがシステムを利用する中で、どこにストレスを感じているかを徹底的に調査します。例えば、以下のような項目をヒアリングします。日常的な利用頻度や目的操作に行き詰まる画面サポートへの問い合わせ内容このようにして、解約に直結するユーザーの本音を広く収集し、改善の種を見つけ出します。2.定義:ボトルネックとなる課題の特定次に、ヒアリング結果を分析し、実は機能不足ではなく「初期設定の複雑さ」が真の課題であると定義づけます。集めた情報から、解決すべき最大のボトルネックを絞り込むプロセスです。ユーザーは「新機能が欲しい」と要望を出すことが多いですが、実態を調べると「設定が難しくて活用できていない」ケースが少なくありません。課題を誤って定義してしまうと、不要な機能開発にコストをかけてしまいます。「誰でも簡単に初期設定ができること」と課題を明確にすることで、チームの方向性が定まります。3.展開:オンボーディング改善案の創出課題が定義できたら、初期設定をスムーズにするためのアイデアを多数発散させます。チュートリアルの導入やUIのシンプル化など、解決策を幅広く検討します。この段階では、実現可能性を一旦横に置き、様々な視点からアイデアを出し合うことが重要です。具体的には以下のような改善案を創出します。入力項目を最小限に減らしたUIへの変更操作手順を案内するステップ形式のチュートリアル設定完了までの進捗がわかるプログレスバーの設置多様なアイデアを出し合うことで、最適な解決策へとつながります。4.提供:プロトタイプ検証と実装最後に、最有力な改善案のプロトタイプを作成し、一部ユーザーでテスト検証した上で本実装へ移ります。アイデアを具体的な形にして、効果を評価するプロセスです。最も効果が見込めるチュートリアルの簡易版(プロトタイプ)を作成し、実際のユーザーに操作してもらいます。検証の手順は以下の通りです。プロトタイプの作成ユーザーによる操作テストの実施フィードバックに基づく改善この検証を通じて操作性を磨き上げることで、リリース後のトラブルを防ぎ、当初の課題を解決できるシステムを提供できます。ダブルダイヤモンドで課題解決するための活用のコツダブルダイヤモンドを活用し、ビジネス課題を解決するための実践的なコツは3つです。最初から完璧な正解を求めすぎない開発やビジネス側の他部署を巻き込むフェーズ間の行き来を恐れない最初から完璧な正解を求めすぎないプロセスを一度で完璧に回すのではなく、仮説と検証を繰り返して精度を高めていく柔軟性が重要です。最初から100点の正解を出す必要はありません。複雑なシステム開発において、最初から確実な正解を見つけることは困難です。そのため、「まずは試してみる」という姿勢が求められます。仮説を立てて小さく検証するユーザーの反応を見て修正するこのように柔軟に対応することで、結果的に質の高いプロダクトを生み出すことができます。完璧主義を捨てることが成功の鍵となります。開発やビジネス側の他部署を巻き込むデザイナーだけでなく、PdMやエンジニアも初期段階から参加することで、実現可能性とビジネス価値を高めることができます。一部の担当者だけで進めないことが大切です。特定の部署だけで完結させると、後の工程で「技術的に実装できない」「ビジネスの目的に合っていない」という問題が生じやすくなります。巻き込むべきメンバー期待できる効果PdM(プロダクトマネージャー)ビジネス目標との連携強化エンジニア実現可能性の担保、技術的制約の把握早い段階から多角的な視点を取り入れることで、プロジェクト全体の進行がスムーズになります。フェーズ間の行き来を恐れない展開フェーズで行き詰まったら定義フェーズに戻るなど、前進と後退を繰り返すアジャイルな姿勢を持つことが重要です。プロセスは常に一方通行ではありません。アイデアを出し合う中で、「本当にこの課題で合っているのか?」と疑問に思うことがあります。その際は、無理に進めるのではなく、勇気を持って前のフェーズに戻りましょう。解決策が出ない場合は課題の定義を見直す定義が曖昧な場合は再度リサーチを行うこのようにフェーズ間を行き来することで、より本質的な課題解決に近づくことができます。ダブルダイヤモンドを活用して上流のUX/UI設計をするならソニックムーブへ「要件定義の段階で意見がまとまらず、開発着手までに時間がかかってしまう」「ようやくリリースしたのに、想定通りにユーザーに使われない」——このようなお悩みを抱える企業様は少なくありません。株式会社ソニックムーブでは、一般的なダブルダイヤモンドを進化させた独自の「トリプルダイヤモンド」手法を用いて、プロジェクトを成功へ導きます。一般的なダブルダイヤモンドは上流工程の課題解決に特化していますが、ソニックムーブではその後の実装やグロースまでを一気通貫で支援します。具体的には以下のプロセスで進行します。第1のダイヤモンド(問題を見つける) ユーザーの潜在的な不満を調査する「問題発見」から、解決すべき課題を絞り込む「問題定義」を行います。第2のダイヤモンド(解決策を作る) アイデアを幅広く出す「解決策発見」から、プロトタイプを用いた「コンセプト検証」を実施します。第3のダイヤモンド(開発から運用まで)検証した要件をもとに「デザイン・開発」を進めます。「β版」での検証を経て「リリース(商用利用開始)」へと至り、その後の「運用」まで伴走します。このように、上流工程の課題発見からシステムの開発、リリース後の運用までをワンストップで対応できる点が私たちの強みです。開発の手戻りを防ぎ、確実にビジネス成果へつながるプロダクトを作りたいご担当者様は、ぜひお気軽にソニックムーブまでご相談ください。ダブルダイヤモンドに関するよくある質問ダブルダイヤモンドの導入に関して、開発現場のご担当者様から寄せられるよくある質問とその回答をまとめました。Q1.実践するにはどのくらいの期間が必要?プロジェクトの規模によりますが、上流の発見・定義フェーズだけで数週間から1ヶ月程度かかるのが目安です。焦ってリサーチ期間を短縮すると、本質的な課題の特定が曖昧になります。質の高いアウトプットを生むために、初期段階のスケジュールには十分な余裕を持たせることを推奨します。Q2.小規模な開発プロジェクトでも活用できる?小規模なプロジェクトでも、プロセスを簡略化して適用することが可能です。工数が限られている小規模開発においてこそ、事前の課題定義が重要になります。本格的な開発に進む前に認識のズレをなくすことで、手戻り防止の観点でむしろ大きなメリットが得られます。Q3.ユーザーリサーチは誰が担当するべきか?UXデザイナーやプロダクトマネージャー(PdM)が主導しつつ、開発者も同席するのが理想的な体制です。専門家がリサーチを進行する一方で、エンジニアがユーザーの生の声を聞くことで、チーム全体の課題に対する解像度が上がります。結果として、実装時の技術的な提案もより的確になります。まとめ:ダブルダイヤモンドを活かして開発を成功へ本記事では、ダブルダイヤモンドの基礎知識から4つのフェーズ、実践における活用のコツまでを解説しました。システムやアプリ開発を成功に導くためには、いきなりコードを書き始めるのではなく、「ユーザーが本当に求めているものは何か」を深く探求するプロセスが不可欠です。発見・定義・展開・提供の4つのフェーズを丁寧に行き来することで、開発の手戻りを防ぎ、ビジネスの成果に直結するプロダクトを創出することができます。自社でのリソース確保や進行に不安がある場合は、専門的なノウハウを持つパートナー企業への依頼も有効な選択肢です。本記事でご紹介したノウハウや視点を、ぜひ今後のシステム・アプリ開発プロジェクトにお役立てください。